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あなたが居ない事実にまた涙するんだ、きっと。

水が渦巻いて流れていく。滲みだす悲しみも憎しみも全て共に流れてしまえば良いのに、と思ったが水はただ流れて行くだけだ。時に流れは止まり、水は澱む。けして流れはしない思いが溶けだしてしまうからだ。少しでも溶ければ流れは止まる。凝固して少しずつ積もっていく。蓄積した合間をぬって新しく水は流れて行くがまた澱む。凝固したものまで流れ出るから余計に水は汚れていく。
このまま水が流れなくなって全てが溢れ出てしまったらどうなるのだろうか。凝固した思いも全て溢れて仕舞ったら、私は。

どうにもならない思いばかりか体内を循り吐き出されることも無いまま蓄積される。あなたに対する言葉までも。血液は沸騰したように熱いし、躯は冷えきっていて感覚は麻痺している。
水だけが、流れ続ける。
溢れ出て、行き着いた先にはあなたが居れば良い。

そして居ない事実に涙して。









BGM:ラウ゛ェル「亡き王女のためのパウ゛ァーヌ」
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未だ空は黒く、唸る声は低く。


焦土。
血の匂いが水蒸気とともに舞い上がる。蒸した空気に流れるものは雨水に掻き消された。
鼻が利かなくなるのは不便だ。火薬の臭いさえ届かなくなる。それは、先程から疼く左腕の痛みから。早まる雨足のせいで視界も悪い。ただ晴天下よりは数倍良い。
『殺すヤツの顔なんか見たくないもんなァ……』
目が合った瞬間引き金を引けなくなるかもしれない。目は全てを孕んでいて、今までと今とこれからと。それは俺の生の貪欲さを掻き立てる。俺に巣食う生は生きたいと思うばかりか人の生まで奪い取る。つまり、生きたいならば殺さなければならない。懇願など虫酸が走る。死にたくないなら俺を殺れ。

相手の目の光、それすら恐怖に感じる俺に絶え間なく雨が降り続けば、また一人殺していく。
それなら、雲も水も光も。
太陽に飲まれてしまえ。








轟け、雷鳴。
つまり、そういうことだ。

ぼたぼた涙零して縋る様に泣くんだ。
俺の遺体は、微動だにせず―当たり前だが―お前の涙を吸い込む。
優しいお前は案の定泣いた。毎夜俺のことを思い出した。そしてほとんど毎夜涙した。
枯れてしまうよ、お前の心が。とも思うがどうする術も持ち合わせていないし。ただ、眺めてる。
あまり泣かれると成仏出来ないだろう。
どうにかしてほしいのだけど、もしお前が俺の為に泣かない夜が来たら結局俺は成仏出来ない気がする。
お前の目が他へ向くと、俺は淋しすぎて逆に。

だから、俺を思って毎夜泣いてよ。

「そんな夢を見たから」
朝、まだ陽の昇り切っていないのにそんな夢をみたから二度寝も出来なかった。
窓の外に目をやればお前はもう起きて、ぼうっと庭先を眺めているから。余計、寝れそうにない気がした。
たからいっそ話してしまうことにした。
「阿呆か。生きてるうちに死んだ夢なんか見るな」
低血圧なお前のいつにもまして低い声が聞けて安堵してる自分に驚いた。
「否定するのはそこだけ?」
からかうように笑えば片目で睨まれた。
「お前が死んだら俺は多分確実に泣くだろうさ」
そうだね、お前は泣くね。でも俺が居なくなることで誰よりも不安なのは俺自身なんだ。
死んだらどうなる?俺は。お前は。世界は不変だろうが俺とお前の間は逆転してしまう。それが、恐い。
だからせめて泣いてほしい。
「お前が泣いてくれるなら死んでも良いかな」
「嘘吐け。生きたくて仕方がないくせに」
結局の所、死ぬのは一緒が良いなんて女々しい考えを隠していたいのだ。









もう既にシリーズ化?
いやいやいや。名前すら出てこないし。
どっちがどっちかわからなくなってきた。





枯れた薔薇も良いもんだ。



赤い世界だった。
白い雪の上で死んだそいつは腹から未だ血を流していた。
助けようと思えば助かったのかもしれない。
それでも俺は何も施したりしなかった。
他に、もっと助かりそうな人間がいたからだ。仕方がないと思いながらも、俺はまた一人見殺しにした。
それは、今でもよく夢に見る。
殺すことが大半だった。自分は医者のはずなのに。
戦場では自分の命を守るので必死な時さえある。皆、生きるのに必死だからだ。


なのに、あいつは違った。

「生きることに貪欲なのは良いです。でももっと他人に命をかける兵になってください。出来ないようなら俺が殺します」
そう言ったあいつは笑顔だった。
誰よりも生に貪欲なのに、誰よりも戦を楽しんでる。
生死の狭間を何よりも喜んでるのはあいつだった。
お陰で俺は助かるヤツは全員助けなければならなくなったし、死にそうなヤツまで助かるようにしなけりゃならなくなった。
やっと、医者になれたような気がした。
俺の命を委ねることが出来る人間が居るから、だ。


夢は今でも見るけど。










前の記事と一緒。
このまま書こうか書かまいか。
暇になったら。